大相撲の格付けと競馬のクラス分けは、どこか似ている。
横綱、大関クラスを競馬のオープン級とすると、関脇、小結は準オープン級。
幕内上位が2勝クラスで、幕内以下は1勝クラス、そして、十両以下序ノ口までは未勝利だ。
十両クラスの未勝利級が、横綱、大関クラスのオープン級を負かすことはない。
が、各クラスの境目あたりは、ときによって格上を負かすことがあるし、
勝てないまでも大善戦(大相撲になる)をすることもしばしばだ。
90年の秋場所をみると、東西の関脇である安芸ノ島と寺尾がそうだった。
とくに安芸ノ島は、上位と対戦するとモーレツな強さを発揮し、
過去の対戦成績もほとんど5分である。
寺尾も、御存知 “善戦マン” といわれるくらいで、上位に対して大相撲をとる。
両力士とも格上と対戦すると、
勝ち負けは別として、相当な地力を発揮するということだ。
そんな力を秘めた両力士が、
自分より格下の相手に対して確実に勝つかといえば、それがそうでもないのである。
安芸ノ島(秋場所6勝9敗)は9敗のうち格下相手に6敗、
寺尾(秋場所9勝6敗)も6敗のうち格下に3敗もしている。
つまり、地力はあっても簡単に勝てないのが相撲であり、勝負事である。
両力士とも、格上力士と大相撲をとることで人気があるワケだ。
競馬にもこれとよく似たケースがある。
実際のクラスが準オープンであっても重賞レースに挑戦したり、
1勝クラスでありながら格上の2勝クラスに挑む馬がいる。
そして、そこで好成績をおさめると、
「格上であれだけ戦ったのだから、自己条件なら大楽勝」
と一本人気になる。
これで勝てば「めでたしめでたし」だが、そうは問屋がおろさない。
「格上挑戦、次走はいらず」なのである。
それではなぜ、格上で激走して地力アップがはかれたはずの馬が、
このようにいとも簡単に惨敗するのか?
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東邦出版発行『知って得する競馬の金言』より
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