知恵の言葉

夏負けは"夏キン"(後編)

それでは、牝馬の場合はどうなのか。
人間さまのように目立つオッパイがあるわけではなく、
たとえあったにしても夏負けのバロメーターにはならないし、
これが出てくるのは妊娠しているときだけだから、事情が違ってくる。
じつは牝馬には巧妙な抜け道があるのである。
牝馬は夏負けにかかる比率が少ないのだ。
体内に熱を放射できる穴があるからだというが・・・?
でも“夏に強い牝馬”というくらいだから、案外事実かも。
人間同様、女性のほうがしぶといようである。

冗談はさておき、
牡馬、牝馬ともにいえる夏負けの症状としては“毛艶”がある。
夏の暑いさかりに汗もかかず、
毛がパサパサになっているような馬がいるが、これは重症の部類。
暑ければ汗をかいて体内の熱を外に出すのが自然の摂理なのだが、
このような馬は、人間でいえば潮を吹いたような状態になってしまうのだ。
夏競馬のパドックで、普通は赤信号といわれる発汗は、
じつは気にする材料ではなく、むしろプラス材料と考えていい。
牝馬はそれほどでもないが、
牡馬は適度に濡れた“水もしたたる男”のほうがいいのである。
パドックで周回を重ねても、さっぱり汗が出てこないようなら、
体が万全ではないと読んでいい。
似たような症状で、
目のまわりの毛がすっかり落ち、眼に精彩がなくなることがある。
いわゆる、“目のまわりの隈”である。
治療法は休ませるしかなく、どんな薬も効かない。
ひどいのになると、かかって半年ぐらいその後遺症が抜けない馬もいる。
冬の競馬なのに「夏負けの後遺症が・・・」
なんていう季節はずれのコメントが出るときは、
すべてこれだと思ってさしつかえない。

「馬を見なければ・・・」ということを嫌う非パドック派には、
以上書いてきたように、夏競馬では夏負けしにくい牝馬を買うことをおすすめ(!?)する。
そしてもうひとつ。
じつは夏負けは、その土地の気候風土に慣れている馬はかかりにくいのだ。
○外なんていうのは、夏負け要員みたいなものだ。
○父馬、しかも母も日本の競走馬で、その父も○父種牡馬。
こういうのはかかりにくいはずだ。
普段は血統欄を見ない人も、夏は見るべし、なのである。
ただし、夏負けは牝馬のフケと同じで、だから走らないというわけではない。
好走する場合もあるのである。
だが、フケと違って、夏負けで好走した馬が次走でガクッときて大敗すると、
しばらくは立ち直れないと考えたほうがいい。

・・・次回は「芦毛の夏駆けは大ウソ」をお送りします。
火曜日の更新をお待ちください!

東邦出版発行『知って得する競馬の金言』より
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